コラム2026.10.07

「トレ・ドンネ」誕生 ~三姉妹の情熱が変えたワイナリー~

トレ・ドンネ

ピエモンテ州ネイヴェ村。4つあるバルバレスコの主要産地のひとつで、その中のMGA*「セッラグリッリ」の丘の頂上に「トレ・ドンネ」はあります。1890年に初代アレッサンドロ・レクイオが創業し、現在も同じ場所に家族の住居兼ワイナリーを構えます。現在は4代目の三姉妹、アントネッラ、ロザンナ、ダニエラとその家族がワイナリーを運営。所有する畑は16haで、そのうち12haが、ワイナリーを囲むセッラグリッリに広がります。

先代までは、大樽を用いるクラシカルなバルバレスコを造っていました。そこからワイナリーのスタイルを大きく変えたのが、4代目となる三姉妹でした。

*MGA(Menzione Geografica Aggiuntiva):バルバレスコの生産地域を細分化した“クリュ”のような地理区画で、現在バルバレスコでは66のMGAが認められています。セッラグリッリはネイヴェにあるそのひとつです。

当主:レクイオ家の三姉妹(左から長女アントネッラ、次女ロザンナ、三女ダニエラ)

「よい醸造家と結婚しなさい」

 三姉妹の父、3代目アレッサンドロは、伝統を重んじる人物でした。

三人目の子どもも女の子だと知ったとき、男子ではなかったことを嘆いたといいます。代々、父から息子へと受け継がれてきた畑とワイナリー。娘たちには、「よい醸造家と結婚しなさい」と話していたそうです。

ところが三姉妹も、父親に負けず頑固でした。

自分たちでワイン造りを継ぎたい三姉妹は、話し合いの末、「3年以内に父が認めるワインを造ることができれば、ワイナリーを任せる」という条件を取り付けます。三姉妹が手掛けた最初のヴィンテージが、いくつもの賞を受賞。目から鱗が落ちた父アレッサンドロは娘たちの実力を認め、ワイナリーを託しました。

彼女たちが掲げた名前は「TRE DONNE」。イタリア語で、そのまま「三人の女性」です。

トレドンネのワインたち

三姉妹で、ワイン造りも新たなスタイルへ

「トレ・ドンネ」の誕生とともに、ワイン造りのスタイルも大きく変わりました。先代までの大樽中心のクラシカルな醸造方法から、フランス産オークを積極的に取り入れるスタイルへ。ネッビオーロにもトノーを使い、ワインに合わせて樽のサイズや熟成期間を変えるようになります。

フラッグシップのバルバレスコ「ドンナ・ミリア」は、アリエ産の新樽トノーで36か月熟成。一方、ランゲ・ネッビオーロ「ドンナ・ネーラ」は、バルバレスコと向きの異なる斜面やバルバレスコ区画の若樹を使い、アリエ産トノーで24か月(新樽比率30%)熟成しています。いずれも以前はスラヴォニア産の大樽で仕上げていたそうですが、熟成のポテンシャルと、若いうちからの飲み心地の良さを両立させるため、現在の醸造方法へと切り替えています。

三姉妹の長女アントネッラは会計・財務、三女ダニエラは醸造を担当。そしてワイナリーの中心で動いているのが、次女ロザンナと夫のピエルニコラ・ブルーノです。ロザンナは最も重要な味わいの決定と経営に携わり、ピエルニコラはディレクターとして海外市場やマーケティングを担当しています。

ワインに家族の女性の名をつける

トレ・ドンネのワインには、すべて家族の女性たちの名前や愛称が使われています。一部だけご紹介します。

・フラッグシップのバルバレスコ「ドンナ・ミリア」は、三姉妹の祖母ミリアから。風邪を引くと、薬の代わりにバルバレスコを飲んでいたという逸話を持つおばあちゃんです。

・ランゲ・ネッビオーロ「ドンナ・ネーラ」は、長女アントネッラから。“ネーラ”はイタリア語で「黒」。アントネッラの美しい黒髪と、黒バラを思わせるワインの深い色合いを重ねて名付けられました。

・バルベーラ・ダルバ「ドンナ・ロッサ」は、次女ロザンナ。”ロッサ”イタリア語で「赤」。ロザンナの赤毛を表現します。平均樹齢が最も高く、味わい深いバルベーラで、ネッビオーロに次ぐベストセラーでもあります。

・ロエーロ・アルネイス「ドンナ・キアーラ」は、ロザンナの愛娘キアーラの名前。「アルネイス」には、ピエモンテの言葉で「いたずらっ子」といった意味があります。そこに娘の名前を付けるあたりも、なんとも母親らしい愛情表現です。

・ランゲ・ビアンコ「クアットロ」はイタリア語で「4」を意味します。これだけ名前そのものではありませんが、三姉妹には合わせて4人の子供がおり(しかも全員が女性)、その4人にちなんだ名前です。

5世代目となる三姉妹の4人の子供たち

「トレ・ドンネ」なのに、日本に来るのはいつもこの人

三姉妹が運営する「トレ・ドンネ」ワイナリーですが、私たちが日本で一番よく会うのは、決まって次女ロザンナの夫ピエルニコラ・ブルーノさん。来日時はいつも、ジーンズに革靴、そしてジャケット。本人に言わせれば、それが「畑に向き合う造り手としての正装」なのだそうです。ギターと車が大好きで、「ネイヴェでアウディに乗って、ジミ・ヘンドリックスを弾くのは僕くらい」と笑います。

そして、とにかくよくしゃべる。

寡黙で職人気質なピエモンテーゼを想像して会うと、みなさま驚きます。ワインの話、畑の話、家族の話。こちらが口を挟む隙を探すくらいのマシンガントークですが、不思議と嫌味がなく、気付けばこちらも話に引き込まれています。「トレ・ドンネ」という名前のワイナリーを、海外で一番熱く語っているのがこの男性、というのも面白いところです。

三姉妹の次女ロザンナの夫、ピエルニコラ・ブルーノさん(ディレクター)

トレ・ドンネ

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