コラム2026.05.20
時間が品質をつくる。カザーレ・デル・ジリオが伝えてきたこと
「時間こそが品質を生み出します。」40年以上にわたりカザーレ・デル・ジリオの醸造を担うパオロ・ティーフェンターラーの言葉は、ワイナリーの哲学を端的に表しています。ワイン未開の地で土地を知り、ワインを育て、信頼を積み上げる姿勢が、醸造の現場から、イタリア内外を問わず営業の一軒一軒に至るまで、一貫して流れています。

自然とともに、ゆっくりと
「私たちは自然に逆らうのではなく、自然とともに働いています。技術はあくまで自然のプロセスを支援するものであり、支配するものであってはなりません。」パオロの栽培と醸造の哲学は、畑での判断に表れています。4月には灌漑を調整し、樹が早い段階から気候の変化に適応し、自らの力でゆっくりと成熟できる環境を整えます。これにより収穫期に向けて穏やかな熟成を促します。「(ラツィオのように)暑い産地における最大の秘訣は、果実の熟成そのものではなく、熟成のプロセスをいかに穏やかに進めるかです。低温でじっくり火を入れるコックのように。」(パオロ)
収穫に置いても同じ哲学が貫かれています。例えば夜明け前の気温が低い時間帯に収穫を行うのも、その延長線上の選択です。摘み取った葡萄の温度と鮮度を守ることが、アロマの保全につながります。また、1km近くに及ぶ葡萄の列は凡そ300mごとに区切られていますが、これは収穫時にトラクターがUターンして素早くかごを回収できるよう設計されたものです。摘み取った葡萄を畑に放置する時間を最小限にするための工夫です。これらの例も自然のプロセスを守るための、パオロ氏の向き合い方です。

土地と人への、長期的な責任
「自然とともに働く」という姿勢は、畑の外にも及びます。パオロはEqualitas認証やISO 22005の取得について、「サステナビリティと言うとき、私は文化的・社会的責任も意味しています」と語ります。認証はあくまで姿勢が形になったものであり、目的ではありません。ワイナリーで働く約35名のスタッフの中には、親子でこのワイナリーと歩んできた家族もいます。土地への敬意と、そこで働く人への敬意。その両方がサステナビリティの根幹にあるとパオロは考えています。
年間600回のテイスティング・イベントが築いたもの
「ワインは味わい、説明されることで理解される。」(国際ホスピタリティ担当/リンダ・シデッラ)この信念のもと、カザーレ・デル・ジリオが約20年にわたって続けてきたのが、年間約600回という試飲イベントです。純粋なテイスティング・イベントはもとより、美術館のオープニング・セレモニーや展覧会、コンサートなど「文化」の集まる場所にブースを設け、グラス越しの対話を通して、飲む人と直接向き合ってきました。広告やメディアよりも「体験の場」を提供し、クチコミを重視し、そしてつながりを大切にするスタイルが、カザーレ・デル・ジリオのブランド基盤を支えています。

グラス越しの対話が、星付きの信頼へ
グラス越しの対話を積み重ねた先に、確かな実績が生まれました。ローマのミシュラン3つ星「ラ・ペルゴラ」、フィレンツェのミシュラン3つ星「エノテカ・ピンキオーリ」をはじめ、ポンツァ島のミシュラン1つ星「アクア・パッツァ」など、イタリア各地の星付きレストランで定番として採用されています。さらにローマでは、ワインリストが著名なトラットリア「アルマンド・アル・パンテオン」の他、ローマで一番おいしいカルボナーラを出すお店として評判の「ロショーリ」にもオンリストされる存在となりました。
時間が、品質をつくる
「私たちの目標は単独での成功ではなく、ラツィオ全体の発展です。トスカーナやピエモンテのように、ラツィオが世界から語られる産地になること。」リンダ氏はそう語ります。その言葉を体現するように、パオロ氏は今日も畑に立ち、醸造と向き合い続けています。「今でも、私はまだ学び続けています。毎年のヴィンテージは異なり、毎年新しい物語がある。」土地を知り、自然に寄り添い、時間を重ねること。カザーレ・デル・ジリオが40年以上かけて伝えてきたのは、そのことに尽きます。

- Casale del Giglio 公式サイト https://www.casaledelgiglio.it/
- Casale del Giglio インタビュー https://www.wirtschaftsforum.de/casale-del-giglio-soc-agr-srl/zeit-ist-fuer-uns-ein-qualitaetsfaktor
