ワイン未開の地で創る イタリアワインの新しい伝統
ワイン未開の地を開拓し、銘醸地に変貌させた先駆者
「イタリアのワイン造りの将来は、伝統的な葡萄品種のイメージを強固にすることに頼るだけでなく、
未だポテンシャルが知られていないエリアにおいてこそ、適切な葡萄と醸造方法を選び、適正な価格
の中で、トップ・クオリティのワインを造ることにかかっている。」(当主アントニオ氏)
カザーレ・デル・ジリオは、首都ローマから海岸線を南に50km。ボルゲリに類するテロワールを持つ
アグロ・ポンティーノに1968年設立。海から10kmと程近い海洋性気候。
日照が豊富で水はけのよい砂質、粘土、泥土で構成された土壌。アントニオ氏の代となった1985年に
大規模な土壌分析を行い、葡萄を植えられたことのない「フロンティア」といえるこの地のテロワールが、
ボルドー、カリフォルニア、ボルゲリなど、世界的な銘醸地と近しいことと判明。
同年に60種以上の国際品種・地場品種を植樹することからワイナリーの挑戦は始まった。
厳しい品質基準をクリアした品種のみをボトリングしリリース。高品質ワインを探し求めていた
地元ローマの星付き店での採用をきっかけに、ラツィオを代表する生産者の座へ瞬く間に駆け上がった。
国際/地場品種の両方で醸すテロワールのワイン
国際品種でワインスペクテイター、ワインエンスージアスト、ジェイムスサックリングなどの
英米評価機関で高い評価を獲得したカザーレ・デル・ジリオ。2000年以降にはイタリア地品種回帰の
流れもあり、地品種でのワイン造りにも取り組む。
いずれも〈未だポテンシャルが知られていないエリア〉と言えるポンツァ島、アンツィオ、オレヴァーノ・ロマーノである。
ポンツァ島は本土から50km、ティレニア沖に位置する火山が隆起して出来た小島で、イスキア島から
移植されたビアンコレッラを、果皮と共に醸す独自の醸造製法が根付いている。
アンツィオは本土の海岸沿いの地域で、海から1kmと近く、僅かな区画ながら接ぎ木をしていない
樹齢70年を超えるベッローネが植えられている。
オレヴァーノ・ロマーノは内陸の丘陵地帯で、火山性土壌の斜面にチェサネーゼが育てられる。
いずれの地場品種もガンベロ・ロッソのトレ・ビッキエーリの連続獲得やデカンタで90点超えを獲得する。
国際品種/地品種を問わず、テロワールのワインを造るワイナリーとして、広く実力を認められている。
オーナーとエノロゴの二人三脚は1985年に始まった
カザーレ・デル・ジリオのエノロゴは、トレンティーノ出身のパオロ氏。
アントニオ氏のビジョンとパオロ氏の技術が結びつくことで、新しい品種の導入や、
伝統的なラツィオ州のワイン造りとは一線を画す独自のアプローチを確立することに成功している。
出会いは1985年の地質調査に遡る。アントニオ氏がアグロ・ポンティーノの可能性を探るため、
トレンティーノ州のサン・ミケーレ・アッラーディジェ農業学校に土壌分析を依頼。
このプロジェクトグループに参加したのが、当時学生だったパオロ氏であった。
調査をきっかけに二人は信頼関係を築き、パオロ氏はエノロゴとして迎え入れられた。
その後、アグロ・ポンティーノをイタリア国内外で注目されるワイン産地に押し上げるための
革新的なワイン造りを推進。このパートナーシップは現在まで続いている。
尚、アントニオ氏とパオロ氏はお互いに息子がおり、先に成人したパオロ氏の息子は
トレンティーノでエノロゴとしてのキャリアをスタートしている。次世代への継承があるか注目したい。